ジジイのたわ言 日頃思う事、感じた事を書いています。四寺廻廊

四寺廻廊 ジジイのたわ言

  • 勧められるまま飲んだコップ酒が効いてきた。
    普段、酒の肴を沢山食べながら飲む酒は、50円袋のピーナッツやサンマの開き缶詰一つではお腹が一杯になる筈はなく、 空きっ腹の状態で飲んだため一気に酔いが回って来た。
    なにより立ち飲みスタイルの疲れが、それに拍車を掛ける。
    もう限界だ。おっさんに御馳走様を言って下宿に帰る。
    帰りがけ、おっさんと云えば、益々元気でエンジン全開といった処で、甲高い話し声や笑い声が背中越しに聞こえた。
    その夜、思いっきり吐いた。
    次の日は案の定、酷い二日酔い。食うものが無い、尋常でなく疲れる、もう立ち飲みは、やるまいと思う。

    [四寺廻廊]

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    夕方、大学からの帰り道、おっさんの様子が気に成りタバコ屋のガラス窓を覗き込みながらゆっくり通る。
    チラッと見えた夕食の団欒風景は、あの「三丁目の夕日」のワンシーンそのものだった。 丸いちゃぶ台に家族5人囲んで食事をしている。姉妹同士が箸と茶碗を持って楽しそうに喋っている。 お婆さんは電気釜とお鍋を横に、お汁をよそっている。 奥さんは目を伏し目がちに無言でごはんを口に運んでいる。 おっさんといえば、右手に箸、左に茶碗を正座した足の付け根に置き、背筋を伸ばし、 目を閉じ、口を閉じて噛んでいる。
    西岸良平お得意の昭和の古き良き時代、暖かいホノボノとした家族団欒のシーン。 ただ一つ違うとすれば、大人たちの張り詰めた無言の空気感と子供たちの楽しげな姿は微妙な一家団欒の光景だ。
    何より、おっさんの神妙な態度から帰宅してからの出来事が容易に想像できた。
    それを見て、ひとり声を押し殺し、肩を震わせ下宿先に帰った。
    その後も酒屋さんの前を通るたび、おっさんの笑い声と、はしゃいだ声を聞かない日は無かった。

    おっさん、あんた病気だ!

    -おわり-
    [四寺廻廊] 2018.5.27


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